香港の民主派団体「デモシスト(香港衆志)は6月30日、解散を宣言しました。
アグネス・チョウ(周庭)氏、ジョシュア・ウォン氏ら主要メンバーが民主化運動からの脱退を表明したため。
中国政府による「香港国家安全法」可決を受けて、これ以上は民主化運動を続けることが困難と判断した模様です。
周庭氏はツイッターで「生きてさえいれば希望があります」と語っています。
彼ら彼女らの、その決断の意味を考えてみたいと思います。
目次
周庭氏らがデモシストを脱退した理由
30日に成立した香港国家安全法の施行は、同日夜施行されました。
この法律により、民主化運動の参加者は逮捕・投獄など取締りの対象となることが確定。
同じく30日、民主化団体「デモシスト(香港衆志)」は主要メンバーの離脱により会の存続が難しくなったとしてFacebookで解散を宣言しました。
ジョシュア・ウォン氏、アグネス・チョウ氏らが30日に脱退を決めたのは「国家安全法」を適用されるリスクを懸念したためと考えられます。
団体に残ることで、自分たちだけでなく他のメンバーが逮捕される可能性を考えてのことでしょう。
さらに、「同法で逮捕された場合の影響を最小限に抑えるための措置」(6月30日・産経新聞)という指摘もあります。
30日深夜に発表された同法律の全文によれば、最高刑は無期懲役です。
法律がどのような形で運用されるか分からないため、とてもこれ以上のリスクはおかせないと判断したのではないでしょうか。
周庭(アグネス・チョウ)氏のツイッターより
6月18日、周庭氏は以下のようなツイートをしています。
https://twitter.com/chowtingagnes/status/1273476407071436803?s=21
G7外相の声明文というのは日本が主導して出したものです。
「重大な懸念」という強い表現で中国の決定を批判しています。
https://twitter.com/chowtingagnes/status/1277225230243491840?s=21
香港で自由や民主主義のために戦う人たちは、自由や命を失うことも考えないといけないということが、本当に悲しい。私も、たくさんの夢を持っているのに、こんな不自由で不公平な社会で生き、夢を語る資格すらないのか。これからの私は、どうなるのか...
いつかまた日本に行きたいなぁ。
— Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) June 27, 2020
この2つは6月28日にツイートされたもの。
まだ23歳の若い女性の悲痛な叫びに胸を打たれます。
そして6月30日、以下の決意表明のツイートが。
私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。
絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。
生きてさえいれば、希望があります。
周庭
2020年6月30日 pic.twitter.com/zEk2NwgU24— Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) June 30, 2020
悲しみや苦しみ、平和な日本への憧れをつづっていた28日までのツイートとは違い、力強いメッセージ。
「絶望の中にあってもお互いのことを想い、強く生きなければならない」という 決意に満ちた言葉に救われる思いがします。
周庭(アグネス・チョウ)氏らのデモシスト離脱に対する声
周庭氏らのこの離脱表明に、多くの人が戸惑いを感じています。
最後まで戦うのではなかったの?
今までの威勢の良さはどこへ?
といった戸惑いの声。そして、
ご自分は安全を確保できたのかもしれないけど、他の若者が命を落としていますよ
ご自分に酔ってただけじゃあ‥
などの批判、非難の声も。
それでも多くの人々は、「今回の判断を尊重する」「お疲れ得様でした」とする、ねぎらいの意見をツイッターに投稿しています。
https://twitter.com/_hopechan_/status/1278160168128110594?s=21
「私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します」との重いツイートに胸が痛んだ。ついに中国が香港国家安全維持法を可決したんだ。国際社会との一国二制度50年間堅持という約束を反故にし、反体制運動を厳しく取り締まると宣言したわけで、民主化運動の担い手の絶望はいかばかりか。
— 立川談四楼 (@Dgoutokuji) July 1, 2020
周庭さんらがデモシストを脱退したことに、ちょっとほっとしている。命あっての未来だから。香港の未来は社会運動でどうにかなる段階を完全にすぎ、国際社会の制裁を伴う圧力によって取り戻せるか否か、というステージに。
— 福島香織「世界は習近平を許さない」重版感謝! (@kaori0516kaori) June 30, 2020
ラクダは考える
私は香港が好きでした。
中国のようであって中国でない、異国情緒と共に見事な高層ビルの群れや美味しい食事、この世の全ての富を集めたかのような華やかな夜景。
何度訪れても良い街だと思っていました。
でも、それももう終わり。
私の好きだった香港の街はなくなってしまいました。
残念でなりません。
アグネス・チョウ氏らは、香港が香港らしくあるために戦っていましたが、今回いったん戦線を離脱することを決意されました。
アグネス・チョウ氏は「生きていれば希望はある」と述べています。
また、ジョシュア・ウォン氏は、「これからは個人の身で信念を貫く」「我が家である香港を守り続ける」と言っています。
彼らの判断は極めて正しいと想います。
彼らは「生き延びること」を選びました。
どんなに崇高な理念を掲げて戦ったとしても、この世からいなくなってしまうようなことがあっては何もなりません。
彼らが「生き延びること」こそが、この革命が続いていくことを意味しているのだと思います。
周庭氏が「いつかまた日本に行きたい」と言っているのと同じように、多くの日本人もまたいつか香港に行きたいと考えています。
その時、香港の街が、それを愛する多くの人が待ち望んだ姿であることを願って止みません。