中国は、5月28日、香港における「反体制活動」を禁止する「香港国家安全法」を導入する方針を決定しました。
全人代(全国人民代表会議)で採択しました。
「賛成」2878票、「棄権」は6票、「反対」はわずか1票でした。
この採択に対する世界の反応をまとめてみました。
目次
「香港国家安全法」強硬反対派の国々・地域
「香港国家安全法」に対し、強硬に批判・反対しているのは以下の国々と地域です。
強硬反対派
- アメリカ
- イギリス
- カナダ
- オーストラリア
- 台湾
アメリカ
アメリカのドナルド・トランプ大統領は29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を決めたことを受け、香港に認めてきた貿易や渡航における優遇措置を停止する方針を発表した。(5月30日・BBC NEWS JAPAN)
トランプ大統領は「中国が一国二制度を一制度に書き換えたのは香港にとって悲劇」と言及。
香港への旅行や輸出管理優遇措置を撤廃するための手続きに入ったと発表しました。
イギリス
イギリスのドミニク・ラーブ外相は28日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を停止しない場合、英国海外市民旅券を保有する香港人に対し、英市民権を獲得する道を開く可能性があると述べた。(5月29日・BBC NEWS JAPAN)
香港が自由な地域でなくなるのなら、「海外市民旅券」を持つ人にはイギリスの市民権が得られるような道が開かれるかもしれないわけですね!
これは大きな英断といえそうな。
また、アメリカのポンペオ国務長官と、イギリス・カナダ・オーストラリアの外相は28日、「自由の砦として繁栄してきた」香港の自由を脅かすことになると共同声明で非難しました。(29日・BBC NEWS JAPAN)
さらに台湾の大陸委員会は28日、報道を受けて「民意を無視し、野蛮なやり方で香港の自由民主と法治を著しく傷つけた」と「強烈な非難」を表明(時事ドットコムニュース)。
以上5カ国の国と地域が最も中国への非難のトーンが高い印象です。
「香港国家安全法」抑制的反対派の国・共同体
抑制的な口調で反対しているのは我らが日本とEU。
冷静に反対派
- 日本
- EU
日本
日本はいつものようにソフトに憂慮しています。
菅長官は28日午後の会見で、全人代での「採択」に関する質問を受け、「国際社会や香港市民が強く懸念するなかで(採択が)なされたこと、及びそれに関連する香港情勢を深く憂慮しております」と述べた。(5月28日・J CASTニュース)
中国に対しては「主張すべきは主張していきたい」とのこと。
無表情に淡々と原稿を読み上げる菅さんの姿が目に浮かびます。
EU
対中国となると、とかく批判が及び腰の欧州ですが、今回ばかりはさすがに動きがありました。
EU外相に当たるボレル外交安全保障上級代表はEU加盟27カ国の外相に送った書簡で、「中国が香港掌握を強化しようとする試みは国際秩序に脅威となる。EUは統一された強力なメッセージを伝えるために努力しなければならない」と強調した。(5月31日・YAHOO!ニュース)
ちゃんと言うべきことは言っています。
でも中国を直接非難するのではなく、加盟国への書簡で「EUは〜努力しなければならない」と言うあたり、やっぱりどことなく遠慮がちですねえ。
「香港国家安全法」支持する国と人々
「香港国家安全法」に賛成する国もちゃんとあります。
北朝鮮
北朝鮮は香港保安法の制定問題により米国と中国の葛藤が激化している状況の中、中国を支持すると伝えた。
今日(30日)朝鮮労働党機関紙“労働新聞”によると、北朝鮮外務省の報道官は、朝鮮中央通信の記者の香港保安法についての質問に「これは(中国の)合法的措置だ」と答えた。
思い切りすり寄っています。
「最近の情勢は〜社会的混乱を助長拡大させ中国を分裂化させる外部勢力とその追随勢力の陰謀の産物である」のだそうです。
相変わらず勇ましいですね。
また、国や地域ではありませんが、香港在住のセレブ芸能人たちは中国を支持しています。
中国が香港で反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入を決定したことについて、人気俳優のジャッキー・チェンさんら2千人を超える香港の芸能関係者が、31日までに連名で支持を表明した。(5月31日・朝日新聞)
記事によると、ジャッキー・チェンさんは「中国の国政諮問機関や全国政治協商会議の委員を務めるなど中国との関係が深い」そう。
これでは、中国の意に沿った発言しかできないのも仕方ないのかもしれません。
私はそれよりも、狭い香港に2000人以上の芸能人の方々が存在することに地味に驚きました。
「香港国家安全法」に対し無言の国々
以下の3国は、6月1日現在、どっちつかず、もしくはダンマリを決め込んでいます。
- 韓国
- ロシア
- インド
韓国
韓国外交部当局者は28日、米中戦略競争などに対応するための外交戦略調整会議について、「この日の会議では香港国家安全法など具体的な懸案に関する議論はなかった。米中葛藤の影響が現在のところ制限的」と説明した。(5月29日・中央日報)
「影響が今のところ限定的」なので「特に話が出なかった」とのことです。
中国を気遣っているようにも見えます。
地域の大国であるインドとロシアは現在のところこの問題について何も発言していません。
いつまでダンマリでいられるものか注目されます。
まとめ
中国が全人代で採択した「香港国家安全法」への各国・地域の反応は以下の通りです。
- 米英加豪・台湾は強く批判・非難
- 日本・EUは抑制的に批判
- 北朝鮮は支持
- 韓国・インド・ロシアは主だった反応なし
上は6月1日の情勢です。
「香港国家安全法」は、香港の議会でなく中国の全人代(全国人民代表大会)が香港の法律を制定することができるようになるという点で、 今までの法改正とは意味が大きく異なります。
一国二制度を根本的にひっくり返すような大きな変化です。
中国のこの決定を世界はどのように見ているのか。
各国はどのような立場をとるのか。
引き続き、世界の反応を注視していきたいと思っています。